樹木葬の意味や仕組み・霊園に納骨する法要の流れと服装やマナー
「CMやチラシでよく聞く樹木葬ってなに?」
「樹木葬の納骨はどんな仕組み?」
といったお問い合わせが多くあります。
樹木葬(じゅもくそう)は、墓石の代わりに樹木やお花を墓標として故人を供養する納骨先です。承継者がいらない、年間管理費用がかからない、自然に還れることで人気です。
樹木葬は屋外に納骨することがほとんどで、屋内に納骨することが多い永代供養墓や納骨堂と明確なちがいがあります。樹木葬の意味や仕組みを知っておかないと、家族や親族とトラブルになる可能性が高いです。
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樹木葬の仕組みとは?自然葬との関係や歴史からわかる意味・定義
樹木葬(じゅもくそう)は、故人のご遺骨を永代に管理・供養する永代供養のひとつで、樹木(シンボルツリー)・お花が墓標(お墓のしるし)になります。
都道府県から許可を得た寺院・霊園によって管理・運営されています。
樹木葬の埋葬方法の仕組み
ご遺骨の埋葬の方法は、樹木の根本やお花の周りにそのまま埋葬する、木綿をつかった布袋に包んで埋葬する、微生物など生物の作用で分解される容器にご遺骨を移して埋葬する方法があります。
樹木葬と永代供養墓・納骨堂のちがい
樹木葬と永代供養墓のちがい
樹木葬と永代供養墓は墓標がちがいます。樹木葬の墓標は樹木・お花ですが、永代供養墓は、墓石が墓標となります。納骨場所や参拝のスペースは屋外にあることが多いです。
永代供養墓は、地上に参拝用の像・塔・碑(モニュメント)があって、地下にご遺骨を安置する納骨室(カロート)があるタイプや、地上にご遺骨を安置する棚があるタイプがあります。
樹木葬と納骨堂のちがい
樹木葬と納骨堂はご遺骨を安置する場所がちがいます。納骨堂は、寺院・霊園の敷地のなかの建物に納骨します。
納骨場所や参拝のスペースは屋内にあるので、天候に左右されずに参拝ができます。
納骨堂には、コインロッカーのように箱型になっている納骨壇に骨壺を安置するタイプ、上段に仏壇・位牌を安置して下段に骨壺を安置するタイプ、受付に専用のICカードをかざすと、参拝室にご遺骨がはいった容器が運ばれてくるタイプがあります。
樹木葬は海や山にご遺骨・ご遺灰を還す自然葬のひとつ
樹木葬はご遺骨(ご遺灰)を海や山など自然に還す自然葬のひとつです。自然葬には、海洋葬・森林葬(散骨)・バルーン葬・宇宙葬・土葬・風葬・鳥葬・水葬があります。
海洋葬・森林葬(散骨)
海洋葬は漁業権がない海の沖合でご遺骨(ご遺灰)を散骨する葬法、森林葬は山奥にご遺骨(遺灰)を散骨する葬法です、散骨したあとは献花や献酒をして故人を供養します。
ご遺骨をそのまま散骨することは、刑法190条の遺骨遺棄罪の規定で禁止されています。
ただし、「葬送のための祭祀のひとつとして節度をもって行われる限り、遺骨遺棄罪にはあたらない」とあるように、遺骨とわからないような状態で散骨をすることは禁止されていません。
厚生労働省のホームページの散骨に関するガイドライン(令和3年3月31日)が掲載されていますが、散骨するご遺骨の具体的な大きさは定められておりません。
日本海洋散骨協会のガイドラインでは、ご遺骨を1mm~2mm程度に粉骨しなければいけないと定められていることから、0.2mm以下に砕いてから散骨している業者が多いです。
厚生労働省のホームページの散骨に関するガイドライン
- ・陸上
- あらかじめ特定した区域(河川及び湖沼を除く。)
- ・海洋
- 海岸から一定の距離以上離れた海域(地理条件、利用状況等の実情を踏まえ適切な距離を設定する。)
- ・焼骨の大きさ
- その形状を視認できないよう粉状に砕くこと。
- 参照元:厚生労働省のホームページの散骨に関するガイドライン
日本海洋散骨協会のガイドライン
- 事業者は、人が立ち入ることができる陸地から1海里以上離れた海洋上のみで散骨を行い、河川、滝、干潟、河口付近、ダム、湖や沼地、海岸・浜辺・防波堤やその近辺での散骨を行ってはいけません。
- 散骨のために出航した船舶においてのみ散骨を行い、フェリー・遊覧船・交通船など一般の船客がいる船舶において散骨を行ってはいけません。
- 海岸から一定の距離以上離れた海域(地理条件、利用状況等の実情を踏まえ適切な距離を設定する。)
- 海洋上で散骨を行うに際しては、漁場・養殖場・航路を避け、一般の船客から視認されないように努めなければいけません。
- 参照元:日本海洋散骨協会のガイドライン
バルーン葬
ご遺骨を大きなバルーン(風船・気球)のなかに入れて、地上から10km~50km先の成層圏まで上昇させて空中に散骨する葬法です。
バルーン葬をする場所は、最低10㎡四方(縦10メートル×横10メートル)の空き地で、角度45度の上空付近に高層ビルや電線など、障害物が無い場所です。
故人が過ごしてきた自宅の庭、思い出の場所といった希望の場所からバルーンを飛ばすことができます。
宇宙葬
宇宙葬は、ご遺骨(ご遺灰)を葬儀専門の衛星の無人ロケット、通信で利用する大型の衛星や月面着陸船に乗せて、国際航空連盟で定義されている宇宙空間(地上から100 km)まで打ち上げて散骨をする葬法です。
ご遺骨をNASAの月面探査機に乗せて月面へ飛ばして接地した箇所をお墓にする月面葬という葬法もあります。
土葬
土葬は、ご遺体を火葬した焼骨ではなくて、ご遺体を埋葬する葬法です。ご遺体をそのまま埋葬する方法とご遺体を棺に入れて埋葬する方法があります。
墓地埋葬法の第2条で、法律上の「埋葬」とは死体を土中に葬ることと記載されているので、法律によって認められた墓地であれば、土中に死体を埋葬することは問題ありません。
山梨県北杜市明野町の風の丘霊園、茨城県常総市の朱雀の郷、北海道余市郡のよいち霊園のように土葬ができる霊園はあります。
ただし、各自治体の条例や墓地管理者が定めた規則によって、土葬ができない寺院・霊園が多いです。
風葬
風葬は、ご遺体に衣を着せて木の上・洞窟・崖に安置して日の光や雨に当てて白骨化を待つ葬法です。
ご遺体が白骨化されてからそのまま放置する方法、白骨化したご遺骨を水で洗って(洗骨)、別の場所に安置する方法があります。
日本で風葬は禁止されておりますが、平安時代には京都で、戦前までは沖縄でおこなわれていました。
鳥葬
鳥葬(天葬)は、読経によって魂が抜けたご遺体の衣服を取り去って野山や岩の上などに置いて、鳥(主にハゲワシ)に食べさせて天高く運んでもらう葬法で、チベットでおこなわれています。
似ている葬法として、ケニア南部からタンザニア北部の先住民マサイ族がおこなう野生の獣(ライオン・ハイエナ)にご遺体を与えて自然へ還す獣葬(野葬)があります。
水葬
水葬とは、ご遺体やご遺骨を川や海に流す葬法のことで、亡くなったかたのご遺体・ご遺骨を小さな舟に乗せて海に流す舟葬、亡くなったのご遺体・ご遺骨をそのまま海に沈める海葬・川に流す川葬があります。
日本では、原則として禁止されていますが、船舶の航行中に乗組員・乗客が亡くなったときに、条件を満たしていれば船長の権限で水葬をおこなうことができます。
条件
- 死後24時間を経過している(伝染病以外)
- 衛生上、遺体を船内に保存できない状況である
- 医師がいる場合は死亡診断書を作成している
- 本人の写真撮影、遺品、遺髪の保管をする
- 遺体が浮き上がらない処置をする
- 相応の儀礼を尽くす
- 消毒や遺体の処置を適切にする等
舟葬はスウェーデンやノルウェーで、海葬はポリネシアやアメリカ・インディアンでおこなわれておりました。
川葬はインドのガンジス川で現在もおこなわれています。火葬場で火葬した焼骨をお坊さんと一緒にガンジス川に運んで流しています。
樹木葬の歴史
1991年10月に神奈川県相模灘沖で散骨
葬送の自由をすすめる会が1991年10月に神奈川県相模灘沖で散骨をおこなったことに対して、法務省と厚生省(現厚労省)の非公式の見解で、違法であると断言できなかったことから世間の注目を集めました。
- 法務省の非公式の見解
- 「葬送のための祭祀として節度をもって行われる限り遺骨遺棄罪に該当しない」
- 厚生省(現厚労省)の非公式の見解
- 「墓地埋葬法はもともと土葬を問題にしていて、遺灰を海や山にまくといった葬法は想定しておらず、対象外である。だからこの法律は自然葬を禁ずる規定ではない」
しかし、海洋散骨ができる・できないにかかわる法的な根拠がないので、違法なのか、適法なのか議論が絶えず、海洋散骨とはちがう自然葬を求めるかたが増えました。
1999年に岩手県の祥雲寺(現:知勝院)で樹木葬が誕生
1999年に岩手県の祥雲寺(現:知勝院)にご遺骨の近くに低木類の樹木を植えて里山の緑化再生を兼ねる樹木葬が誕生しました。
2004年に北海道長沼町で樹木葬墓地問題が発生
2004年に北海道長沼町でホロナイ樹木葬森林公園で墓地以外の場所で散骨する樹木葬が問題となりました。地域の住民の反対運動をした結果、長沼町議会が墓地指定を受けた場所でしか散骨できないという条例を制定しました。
2006年に神奈川県横浜市の霊園で初の公営の樹木葬が誕生
2006年に神奈川県横浜市の「横浜市営メモリアルグリーン」で初めての公営の樹木葬が誕生しました。
2006年以降、人口が多くて墓地不足が問題となっている都市部を中心に、樹木葬が普及し始めました。2012年には小平霊園に都立霊園初の樹林墓地が誕生しています。
2022年現在 整備が進んでいる樹木葬
公共・民間を問わずに樹木葬の区画が増え続けておりますが、霊園の一部の区画を整備してつくられた樹木葬墓地が多いことから、埋葬したご遺骨が自然に還る樹木葬墓地を求める声が多くなっています。
自然葬・樹木葬を選んだ芸能人一覧
樹木葬を選んだ芸能人
- 田中角栄研究で知られる立花隆さん(2021年逝去)
- 女優の市原悦子さん(2019年逝去)
- 小説家の島らもさん(2004年逝去)
自然葬・樹木葬を選んだ芸能人一覧
自然葬を選んだ芸能人・有名人
- 俳優の勝新太郎さん(1997年逝去)
- 漫才師の横山やすしさん(1996年逝去)
- 俳優・歌手の石原裕次郎さん(1987年逝去)
- 作家・元東京都知事の石原慎太郎さん(2022年逝去)
樹木葬に納骨する手続きの流れや方法・服装を紹介
樹木葬に納骨する時期は四十九日が多い
仏教では命日から49日後に故人の魂の行き先が決まるとされていることから、樹木葬では命日から49日目に四十九日法要おこなって故人のご遺骨を納骨することが多いです。
樹木葬に納骨する納骨式の流れ
お坊さんもしくは、墓地の管理事務員と調整した日に、指定された場所へ伺って埋葬許可証・契約書の提出、費用・お布施の支払いをしましょう。
納骨する場所に移動したあとは、ご遺骨の納骨、お坊さんによる読経、お線香をします。
民営霊園・公営霊園の場合、お坊さんによる読経を希望するなら事前に読経をしてもらえるのか、いくらかかるかを確認しましょう。
樹木葬に納骨する納骨式の服装
霊園型樹木葬の納骨式の服装は喪服が多いです。葬儀で着用した喪服で参列するときは、事前に汚れがないか確認しておきましょう。
里山型樹木葬の納骨式の服装は、山のなかを歩ける動きやすい服装でいきましょう。シャツは襟付きのもので柄がついていない運動着、パンツは色の暗い運動着、靴は黒などの暗い色の運動靴が望ましいです。
雨が降る可能性があるなら、コートを着用したまま納骨式に参列することをおすすめします。
樹木葬にした後の法要やお墓参り・お供えのマナー
法事・法要の服装
四十九日 | 一周忌 | 三回忌以降 | お墓参り | |
---|---|---|---|---|
霊園型 | 正喪服 準喪服 |
正喪服 準喪服 |
略式正装 | 指定なし |
里山型 | 運動着 | 運動着 | 運動着 | 運動着 |
霊園型樹木葬の場合、 四十九日と一周忌の服装は、遺族・親族なら正喪服・準喪服、参列者なら黒・紺・グレーのスーツ(男性)、黒いブラウスやスカートに黒もしくはベージュのストッキング(女性)の略式正装で参列しましょう。
三回忌以降の法事・法要の服装は、遺族・親族および参列者ともに略式正装がほとんどです。
最低限の身だしなみや清潔感は大事にしたほうがいいので、派手な服装やノースリーブ・タンクトップ・ハーフパンツといった肌の露出が多い服装は避けたほうがいいでしょう。
合祀型樹木葬は、他家の参列者がくるので失礼のない服装で参列することがのぞましいです。
里山型樹木葬の法事・法要の服装は、山のなかを歩ける動きやすい服装でいきましょう。シャツは襟付きのもので柄がついていない運動着、パンツは色の暗い運動着、靴は黒などの暗い色の登山靴・スニーカーが望ましいです。
里山型樹木葬は山奥にあることが多いので、水筒など水分補給ができるものを持参する、雨が降っている日や風が強い日は避けることが大切です。
お供えのマナー
山火事防止のためにお線香やろうそくを持ち込めない、お水を入れて花瓶を設置できないという規則があります。
里山型樹木葬は、どの樹木のもとにご遺骨が埋葬されているか一見するとわからないことがあるので、目印をつけておくといいでしょう。